このところ再び小説熱が再燃し、
図書館から借りてきては読んでいる。
この世の中の人々は、実り多い読書を
しているのだろうけど、僕の場合は、
たわいもない楽しみである。
この間は、「私を離さないで」を読んだ。
カズオ・イシグロがブッカー賞を取った
小説だ。
端正で、隙間無く積み重ねられた文体は、
あこがれと、睡魔を僕に与えてくれた。
双方とも、僕が愚かな読者だから。
はじめは、何気ない青春の戸惑いと、
発育を表現した成長の記録だが、
その中に、時折、鋭く、運命が顔を出す。
この物語が、現実とは違う、別の世界のなにか
だと、打ち付ける音がする。
人に提供することを宿命付けられた生命。
永存することを許されない誕生。
残酷という目的地に向けて進む、輝かしい未来。
なんとも、心打たれる物語だった。
その後、また図書館で本を借りた。
「間宮兄弟」
前、gyaoで映画を上映していたのだけど、
はじめの数十分を観た後、そのうちと思っていたら
終わっていた。
・
さりとて、DVDをレンタルして観る気もなく、
気になりながら、時ばかりが過ぎた。
・
そんなとき、図書館に行くと本があった。
借りた。
・
おもしろかった。
ただし、悲しかった。
・
不自然なまでに、彼らの人生を二人で自然に
生きている兄弟の姿が特徴のある浮遊感と、
安堵感と、不安感で描かれる。
・
生きるための思惑と、恋愛という煉獄の中で、
忙殺される人々の心情と、願おうとも隔絶され
た彼らの生き方に、ほほえましい性(サガ)を感じる。
・
彼らに人並みの幸福を与えたいと僕は願ったが、
そうはならず、平凡な彼らの自然なかつ不自然な
性が繰り返され終焉を迎える。
・
しかし、男性である、そして、主人公である
兄弟の姿が、趣味に狂喜乱舞し、不遇な人間
関係や恋愛に流されているそれらが、まるで
この世のものとは言えない、愉快な幻想に違い
無いのだけど、
・
この物語に出てくる女性たちは、実に生々しく、
冷酷で、冷静で、自分を見つめて大切にしている。
・
けっして、けっして、結局、兄弟を受け入れる
結果にはならない。甘い、幻想にはならないのだ。
・
それでも、この兄弟の物語は愛らしい。
痛々しく愛らしい。そして、この物語に関する、
女性たち、もちろん作者もそうだけど、憎いほど
現実的で、悲しい存在だと感じるのだ。
・
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