2011年3月22日火曜日

最近、小説、

このところ再び小説熱が再燃し、


図書館から借りてきては読んでいる。


この世の中の人々は、実り多い読書を


しているのだろうけど、僕の場合は、


たわいもない楽しみである。



この間は、「私を離さないで」を読んだ。


カズオ・イシグロがブッカー賞を取った


小説だ。



端正で、隙間無く積み重ねられた文体は、


あこがれと、睡魔を僕に与えてくれた。


双方とも、僕が愚かな読者だから。



はじめは、何気ない青春の戸惑いと、


発育を表現した成長の記録だが、


その中に、時折、鋭く、運命が顔を出す。



この物語が、現実とは違う、別の世界のなにか


だと、打ち付ける音がする。



人に提供することを宿命付けられた生命。


永存することを許されない誕生。


残酷という目的地に向けて進む、輝かしい未来。



なんとも、心打たれる物語だった。
















その後、また図書館で本を借りた。


「間宮兄弟」


前、gyaoで映画を上映していたのだけど、


はじめの数十分を観た後、そのうちと思っていたら


終わっていた。



さりとて、DVDをレンタルして観る気もなく、


気になりながら、時ばかりが過ぎた。



そんなとき、図書館に行くと本があった。


借りた。



おもしろかった。


ただし、悲しかった。



不自然なまでに、彼らの人生を二人で自然に


生きている兄弟の姿が特徴のある浮遊感と、


安堵感と、不安感で描かれる。



生きるための思惑と、恋愛という煉獄の中で、


忙殺される人々の心情と、願おうとも隔絶され


た彼らの生き方に、ほほえましい性(サガ)を感じる。



彼らに人並みの幸福を与えたいと僕は願ったが、


そうはならず、平凡な彼らの自然なかつ不自然な


性が繰り返され終焉を迎える。



しかし、男性である、そして、主人公である


兄弟の姿が、趣味に狂喜乱舞し、不遇な人間


関係や恋愛に流されているそれらが、まるで


この世のものとは言えない、愉快な幻想に違い


無いのだけど、



この物語に出てくる女性たちは、実に生々しく、


冷酷で、冷静で、自分を見つめて大切にしている。



けっして、けっして、結局、兄弟を受け入れる


結果にはならない。甘い、幻想にはならないのだ。



それでも、この兄弟の物語は愛らしい。


痛々しく愛らしい。そして、この物語に関する、


女性たち、もちろん作者もそうだけど、憎いほど


現実的で、悲しい存在だと感じるのだ。





"間宮兄弟 (小学館文庫)" (江國 香織)



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